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 Written by 美咲ひなた


 
 薔薇と鎖 〜序章〜

2012/10/05
御狐神双熾×白鬼院凜々蝶




街灯の灯りさえも届かない、薄暗い路地裏。
小さな体を震わせながら一人の少女は壁を背にしてうずくまっていた。
長くて黒い髪は何日も梳かしていないためにボサボサで、まだ若くて張りのあるはずの白い肌も傷だらけな状態で手当が必要なように見える。
薄汚れてしまって破けている洋服の隙間からは数えきれないほど傷。左腕には大きな怪我をしているようだった。
自ら止血したのだろう、ただの布きれを腕に巻いているだけなので血がそこから滲み出て真っ赤に染まっており、痛々しさに目を背けたくなる姿だった。


「お腹が空いてしまったな・・・」
少女が呟くと空からパラパラと雨が降り、次第にその勢いが増していった。
濡れた服が肌に纏わりつき、気持ち悪さと冷たさに少女は眉間に皺を寄せて目を瞑り、止みそうにない雨に少しでも雨除けできる場所を探すために少女は重い腰を上げた。
だが、痛む左腕の傷を押さえてゆっくりを足を前に踏み込もうとした時。
ぐにゃり・・と少女の視界が歪んだ。
「ぅ・・・・」
傷口と大量の血。そして体力。少女にとっては限界だった。
朦朧とする意識の中で、懐かしい声が自分の名前を呼んでいるような気がした。


(誰、なんだ・・・)


薄れゆく意識の中で少女は必死に目を開けると、人影らしきものが近づいてくるのが見えた。
しかし。それが本当に人だったのか、確認する前に少女の意識が途切れる。


(暖かい・・・・・・)


その場に崩れ落ちようとした時、力強い腕に抱きとめられたような気がした。
心地よいぬくもりと、懐かしい『ニオイ』