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Written by 美咲ひなた


 
 Relation of master to servant

2012/10/05
御狐神双熾×白鬼院凜々蝶




突然背後から抱きつかれて、僕は声にならない悲鳴を上げた。

「御狐神く・・・、んっ・・・ぅ・・・・・・」

言い終える前に、強引に唇を奪われて力強い腕に抱き締められる。
触れるだけのキスから、徐々に荒々しいまでの濃厚なキスへ。
何度も唇を重ねているはずなのに、御狐神くんのキスには慣れなかった。
ドキドキと高鳴る鼓動で息苦しくなる。

「凛々蝶さま。とても、可愛らしいですよ」
「・・・恥ずかしいことを言わないで欲しい」

スッポリと御狐神くんの腕の中に収められてしまった僕は、必死でその腕から脱出しようと試みてはみたものの、力で敵うはずはなく。あっけなく、無駄な抵抗で終わってしまった。

「どうしたんだ、急に・・・・・・」

僕は御狐神くんの突然の抱擁について、理由を尋ねることにした。

「凛々蝶さまが僕の部屋で、僕のためにコーヒーを淹れてくださっている姿を見たら・・・つい、抑えがきかなくなってしまったんです」

そう、僕は今御狐神くんの部屋に居る。
時刻も深夜の24時を過ぎて、日付も変わっていた。昼間忙しくて、二人でデートする約束を守れなかったので、その穴埋めと謝罪するために御狐神くんの部屋に訪れたのだが・・・



      なぜか、こんな状態になっている。



「僕にこうされるのは、お嫌ですか?」

御狐神くんはしゅんと顔色を曇らせて反応に困る質問をしてきた。嫌だ、なんて思うはずはないのだが。
僕は素直にはなれなくて、その話題から話を逸らしたかった。
だが、御狐神くんの目が真っ直ぐに僕の目を捉えて離さない。僕はその瞳から目を逸らすことができなくて、ぎゅっと目を瞑って首を横に振った。

「ち、違うんだ・・・その、嫌じゃないけど・・・どう反応したらいいのか分からないんだ」
「凜々蝶さまのしたいように、僕を扱ってくれればいいんです」
「そんなこと、できない・・・っ」
「僕は凜々蝶さまの下僕ですから。僕を自由に扱ってくれていいんですよ」

にっこりと、怖いぐらいの笑顔で御狐神くんは笑う。でも、僕にはそんなことはできなかった。

「僕は・・・御狐神くんのことが大切なんだ。だから・・・そんなことはできないし、対等でいたい」

だから、物のように『扱う』ことはできないのだと訴えた。

「嬉しいです。凜々蝶様・・・そのお気持ちだけで十分です」

僕を抱きしめる御狐神くんの腕に、更に力が篭ったような気がした。

「く、苦し・・・!」
「あぁ、申し訳ありません。嬉しくて、つい」

御狐神くんは子供をあやすように僕の頭をポンポンとした後、長い髪を優しく撫でてくれた。「綺麗な髪ですね」と言って、髪に口付けを落とし、御狐神くんの細い指先が僕の頬を伝う。そして、その指先は唇に触れると、唇のラインをなぞる様な動きをした。その絶妙な強弱に、くすぐったい様な感覚が襲ってきて僕は力が入らなくなってしまった。力が抜け、僅かに開いた僕の唇。その開いた空間に、御狐神君の舌が入り込んでくる。

「・・・・・ん、・・・」

ピチャリ、と厭らしい音がして恥ずかしさで頭がいっぱいになる。普通にキスするだけでは音なんかは出ない。絶対にわざと、音を立てているんだと僕は思った。だけど、抵抗するどころか僕の体は完全に御狐神君の成すがままになっていて、彼の舌の動きに合わせて貪欲に快楽を求めようとしていた。


(頭がおかしくなりそうだ・・・・・・)


「凜々蝶さま・・・もっと、僕を必要としてください」

御狐神くんは恥ずかしげもなく、そう言うと僕を抱き上げてベッドの上へと運ぶ。御狐神くんが覆いかぶさると二人分の重みでベッドがギシリと軋んだ。

「御狐神くん・・・!ちょっと待ってくれないか・・・」
「どうかなさいましたか?」
「その・・・シャワーを、浴びたいのだが・・・」

今日は一日外へ出ていたし、汗もかいてしまっていたのでシャワーを浴びたかったのだが、御狐神くんにやんわりと却下されてしまう。

「僕は凜々蝶さまなら、気にしませんよ?」
「!!!いや、僕は気にするんだっ・・・!」
「僕は凜々蝶さまの匂いが好きですが・・・」
「君は変態かっ!?」

御狐神くんは僕の首筋に顔を埋めると、犬のようにクンクンと鼻を鳴らす動作をした。
「凜々蝶さまの匂いがします」
「く・・・・!」

僕が赤面し、反応に困っている姿を見る御狐神くんは実に楽しそうだった。恨めしくて、僕は眉間に皺を寄せることしかできなかったのだが、ガーターベルトに彼の手が伸びると一瞬にして体に緊張が走った。これから、されるであろう行為に体が硬くなる。

「凜々蝶さま。やはり緊張されますか」
「当たり前だ・・・・、だって・・・」
「だって?」
「その、初めてだから・・・っ、い、言わせないでくれ」



      そう。僕はまだ男性経験がないのだ。



御狐神くんと恋人関係になってから早数ヶ月。何度も裸で抱き合ったりキスもしてきた。だけど、まだ結ばれたことがない。怯える僕を見かねて、御狐神くんはそれ以上のことをしてこようとはしないからだ。

「まだ、怖い・・・ですか?」

怖くないといえば嘘になる。だけど、結ばれたい気持ちはいつだってあった。

「怖い・・・けど、御狐神くんになら・・・」

御狐神くんになら、『僕の初めて』をあげてもいいと思った。だから、御狐神くんの部屋に行く時は僕もそれなりの覚悟を決めて来ているのだが・・・。いつも、キスや軽い愛撫以上のことを彼はしてこない。

「・・・・ぁ、っ・・・・、ん」

首筋と耳裏を御狐神くんの唇がゆっくりと交互に移動する。彼の髪の毛が目の前で揺れて、くすぐったいのと、じんわりと体の奥からこみ上げてくる甘い痺れ。同時に襲ってくるその感覚に背筋がぞくりとした。

「待ってくれ・・・・、電気を消して欲しいっ・・・」

御狐神くんの指が僕のシャツのボタンを外そうとしたので、恥ずかしくなって灯りを消してくれるようにと懇願したのだが、僕の声は届かなくて御狐神くんは無言のままシャツのボタンを外していった。
シャツのボタンが全て外されると、お世辞にも大きいとはいえない僕の胸の膨らみが露になった。

「あんまり、じろじろ見ないで・・・、っ・・・・!」
「凜々蝶さまのお姿をしっかりと目に焼き付けておきたいので、見ないでというのは・・・それはできないお願いですね」

ニコニコと清々しいまでの笑顔で御狐神くんはそう言い放った。
どこに主従関係があるのか・・・僕は頭を抱えた。


 






>>>>> END